2025/7/6【第12回関東大学ラグビーオールスターゲーム2025 対抗戦選抜対リーグ戦選抜】マッチレポート
第12回関東大学ラグビーオールスターゲーム2025 対抗戦選抜対リーグ戦選抜
7月6日(日)・秩父宮ラグビー場
○対抗戦選抜34-33リーグ戦選抜●
《BRIEF REVIEW》
第12回関東大学ラグビーオールスターゲームの対抗戦選抜に、帝京から、FL鈴木彪馬、PR松原結生、FLアントニオ・フィシプナ、CTB佐藤楓斗の4名が選ばれた。FL鈴木は先発、あとの3人は後半からの出場となった。
お互いに対抗戦グループ、リーグ戦グループの誇りを賭けての戦い。オールスター戦というとお祭と捉えられがちだが、この日の試合はスタンドの大声援もあり、プレーも結果も非常に熱い試合となった。
先発の鈴木は開始早々から何度も好タックルを見せる。相手がミスしたボールへの反応もよく、うまくボールを奪う。
先制したのは対抗戦選抜。7分、ゴールライン・ドロップアウトからのボールをつなぐ。鈴木がいい形で前進し、チャンスを広げると外へと展開。鈴木はアタックラインにも入り、うまくパスをつなぎ、先制トライをアシストした(5-0)。
10分には、ハイパントをうまく後ろにはじいてつなぎ、そのまま対抗戦選抜がトライ(12-0)。
その後、攻められる時間帯もあるが、相手のトリッキーなプレーにもFL鈴木がうまく反応して、前方にキックし、ピンチを防ぐ。その後はお互いにいいタックルを連発し、一進一退の攻防となる。
30分、対抗戦選抜が攻め込み、ゴール前でのラインアウトを得ると、なんとBKも一人を除いて全員が並ぶ13人ラインアウトを慣行。スチールされてピンチになるかと思われたが、相手のキックをうまくチャージし、インゴールで拾ってそのままトライ(17-0)。
36分にトライを返されるが、17-7と対抗戦選抜がリードして前半を折り返した。
お互いにメンバーを大幅に替えた後半は、前半の戦いぶりとは一転して点の取り合いとなる。6分、13分とトライを奪われ、逆転を許してしまう(17-19)。
ここからは文字通りのシーソーゲーム。17分に対抗戦選抜、19分にリーグ戦選抜、23分には対抗戦選抜、31分にはリーグ戦選抜がトライを奪い、この時点で29-33と4点のリードを許す展開。
後半から出場したFLフィシプナは豊富な運動量と強いフィジカルで攻守に活躍。PR松原はスクラムの安定のみならず、フィールドプレーでも体を張り続ける。CTB佐藤はディフェンスで体を張り、アタックではBKラインのつなぎ役としての役割を担う。
38分、キックカウンターから筑波大学の1年生内田選手があいてディフェンスを5人抜き去る走りでトライを奪い、逆転(34-33)。しかしその直後、ペナルティなどもあり、ゴール前まで攻め込まれ、大きなピンチとなる。
モールで押し込まれ、ゴールライン寸前にまで迫られ、プレシャーを受けたところでレフリーの笛が鳴り、右手が上がる。逆転トライかペナルティか。場内放送では「トライ!」のアナウンスが流れるが、判定はボールキャリアのダブルモーション(ノットリリースザボール)のペナルティ。
対抗戦選抜がタッチに蹴り出し、34-33で対抗戦選抜が勝利した。
《COLUMN》
―― オールスターは「お祭」!?――
7月6日、秩父宮ラグビー場にて、第12回関東大学ラグビーオールスターゲーム2025が開催されました。数あるプログラムの中の最後のゲームが、対抗戦選抜対リーグ戦選抜の試合でした。
帝京から選抜されたメンバーは4人。それぞれ、普段はなかなかできないような貴重な経験をし、今後に活かせそうな何かを掴み取ることができたようです。
オールスターゲームは何度も見てきましたが、今年は例年以上に盛り上がったように感じました。それは34-33という接戦だったこともありますが、それだけではなかったと思います。
一つはスタンド(各校の部員たち)の盛り上がりによる一体感。普段の公式戦ではなかなか見られない光景です。
リーグ戦の監督を務められた東洋大学の福永昇三監督は記者会見で「2日間という短い時間で何ができるかを考えた。仲良くなって、いいコミュニケーションを取れたチームが勝つと思ったので、応援の人たちも含め、心を一つにすることに取り組んだ」とおっしゃいました。
盛り上がったもう一つの理由は、各プレーヤーが公式戦どおり、いやもしかしたらそれ以上に激しいプレーを見せてくれたことです。一対一の接点が非常に激しく、ワンプレーごとにお互いのプライドのぶつかり合いが見られました。
対抗戦の監督を務められた早稲田大学の太田尾竜彦監督は「『対抗戦選抜のジャージの価値を上げよう』と言って臨んだ。メンバーは体を張ってくれる人をセレクトした。体を張ったディフェンスをしてくれる人。実際、みんな体を張り続けてくれて、ジャージの価値を高めてくれた」とおっしゃいました。
オールスターゲームと言うと、例えばプロ野球などでは「お祭」にたとえられます。「真剣勝負ではない」「イベントそのものを楽しむもの」といったような意味なのでしょう。
しかし、今年の「関東大学ラグビーオールスターゲーム」には「お祭」の枠には収まり切らない、熱い戦いがありました。スタンドも含めた一体感と、体を張り続けた激しいプレー。それが「お祭」以上の熱を産み出してくれたのだと思います。
もっとも、そもそもラグビーのルーツはお祭だという説が有力です。隣接する町の住人たちが大勢でボールを蹴り合い、相手の町のゴールまで運んだ方が勝ちというお祭だったという話があります。町を挙げての、いや隣町まで挙げてのお祭ですから、さぞ盛り上がったことでしょう。
お隣どうしの対抗戦とリーグ戦。2つの町を挙げてのボールの運び合い。お互いの住人たちが結束して応援し、盛り上がる。そう考えると、今回の関東大学オールスターゲームも、大きな意味で「お祭」だったと言えるのかもしれません。
(文/木村俊太・写真/志賀由佳)






