秋元助教の論文がJBCに掲載されました

Akimoto M, Susa T, Okudaira N, Hisaki H, Iizuka M, Okinaga H, Okazaki T, Tamamori-Adachi M.
A novel LncRNA PTH-AS upregulates interferon-related DNA damage resistance signature genes and promotes metastasis in human breast cancer xenografts.
J Biol Chem. 2022 Jul;298(7):102065. doi: 10.1016/j.jbc.2022.102065. Epub 2022 May 23. PMID: 35618021; PMCID: PMC9198338.

 

【概要】 Long noncoding RNA (lncRNA) は組織特異的な遺伝子発現制御因子であり、その制御異常はがんを含む様々な病態につながる遺伝子発現異常を誘発する可能性があります。コンピューター解析により多くのlncRNAが発見されていますが、その多くの機能は未だ説明がつけられていません。この論文では、極めて希少な異所性PTH産生後腹膜悪性線維性組織球腫とPTH過剰産生の副甲状腺腫瘍の臨床材料において、ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)遺伝子下流に検出された新規lncRNAの性質と機能について解析を行いました。私たちは、この新規lncRNAを「PTH-AS」と命名し、その正確な位置と長さ、転写方向、ポリアデニル化、核局在を明らかにしました。PTH非発現ヒト乳癌T47D細胞にPTH-ASを強制発現させても、近傍のPTH遺伝子の異常発現は誘導されなかったものの、癌化するインターフェロン関連DNA損傷耐性署名(IRDS)遺伝子などのJAK-STAT (Janus kinase-signal transducer and activator of transcription) パスウェイ関連遺伝子が著しく発現上昇することがマイクロアレイおよびGene Ontology解析から明らかになりました。興味深いことに、PTH-ASの発現はT47D細胞の浸潤とDNA損傷薬(ドキソルビシン)に対する抵抗性を高めるだけでなく、マウス異種移植モデルにおいて腫瘍増殖よりもむしろ肺転移を促進することが分かりました。さらに、PTH-ASを発現するT47D腫瘍では、マクロファージの浸潤が増加し、IRDSに関連したがんの特徴と同様に、血管新生が促進されました。詳細な分子メカニズムは未だ解明されていませんが、この研究ではPTH-ASがIRDS遺伝子のアップレギュレーションを介して、おそらく腫瘍の悪性進展に寄与していると結論づけられました。